- 2011年12月11日 23:10
- 病害虫対策・アイディア
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今月のテーマは...冬場のバラの管理について。
内容が多いので、12月と来年1月の2ヶ月で、1つのテーマを前後編に分けての2ヶ月完結型のバラ塾となるそうです。
- 木立のバラの、用土変え・鉢増し・選定と冬場の管理方法
- ツルとシュラブのバラの、用土変え・鉢増し・選定と冬場の管理方法
12月は1つ目のテーマ「木立のバラの、用土変え・鉢増し・選定と冬場の管理方法」です。
(つまり来月は2つ目のテーマってことですね♪)
ポイントは系統タイプではなく樹形タイプで管理分け
今回のバラ塾の中で言う「木立のバラ」というのは、ハイブリットティ(HT)系の大輪バラと、フロリバンダ(F)系の中輪バラの2種類のこと。
でも、次月の「ツルとシュラブ」に分類されている系統のバラたちの中にも、系統を無視して樹形だけで見てみると、木立バラに分類される樹形タイプの子たちも居るのです。
・・の中にも、中輪の木立バラと同じように剪定したほうが良い樹形タイプのバラも、この分類と考えます。
イングリッシュローズ(ER)の例では、アンブリッジローズ、グラミスキャッスル、グレイス。
オールドローズ(OLD)の例では、スヴニール・ドゥ・ラ・マルメゾン。
ティーローズ、チャイナローズにも、木立性のバラが居るそう。
デルバール(Del)も同様。
ERだから!ティーだから!デルバールだから!というように系統のタイプだけでひとくくりの判断をするより、更に踏み込んで、「品種それぞれの樹形タイプを見極めて手入れをしてあげると、春の花が寄り綺麗に咲く」のだそう。
なぜ、シュラブに分類されているバラの中に木立に分類できるバラがあるのか。
これについて特にコメントはありませんでしたが、交配の連続で産まれた品種ならではの個性があるからなんだろうなーと、バラ塾などでのてんちょの言葉を思い出して、ひらぎは勝手に想像しています。
剪定の基本をおさらい。
それぞれの系統によって、剪定のコツは違いますが、基本は一緒。
以前のバラ塾で何度か教えてもらったことを復習して思い出しておきましょう。
- 内芽、外芽は、求める樹形に合わせて
- 芽の上5mm~1cmの理由
春の樹形をイメージして...。
栄養が集まりやすい枝
バラの枝は、太い枝と若い枝に栄養が集まりやすい性格があるのだそう。
そこにプラスして、頂芽優勢の性質から高い枝にも栄養が集まりやすい。
段階わけするとこんなカンジでしょうか。
- 若い枝
- 太い枝
- 高い枝
この3つの性質を考えると、細い枝を深く剪定してしまうと、栄養がさらに集まりづらい枝になってしまうのですね。
なので、細めの枝はわざと周りの枝より少し高めに剪定してやると、栄養が集まりやすくなる。
そして、うまくいけばその細い枝の成長を促すことができるかも。ということ。
ハイブリッド・ティ(HT) - 大輪系のバラの場合
HTの特徴は秋の管理の時に確認しました。
これをおさらいしながら、更に樹形についての特徴も確認です。
HT:ハイブリッド・ティの場合
- 四季咲き(花芽分化期に必要な夜温:15~18℃)
- 大輪(枝の充実が必須)
- 枝が太く、枝数が少ない
- 木立ち・・・まっすぐ伸びる
HTは、大輪を支えるための太さのある元気な枝が大切です。
その枝を作るための冬剪定なので、ある程度太いところまで切るのがポイントになります。
HTの冬剪定
モデルは、ロイヤルハイネスさん。
株元の枝は少ないのに、次々に分岐して枝数が増えていますね。
このまま来春を迎えれば、樹高もさらに高くなり、枝の太さや栄養が足りないと花がつかず、ブラインドになってしまうかもしれません。
HTにはそうなりやすい性質があるのだそう。
これを割けるためにも、ある程度深いところまで剪定するのが大切になります。
鉢植えの場合は20~30cm、地植えの場合は30~50cmの間で剪定してあげると良いそう。
地植えが鉢植えより少し高く剪定できるのは、地植えにしたバラは鉢植えよりも根を沢山広げることができる分、枝もある程度高いところまで充実した枝が成長できているので、ある程度高い位置で剪定しても、また充実した枝を伸ばすことができるので、良い花も付けられるのだそう。
ずいぶんさっぱりしましたね!
HTの場合、剪定のポイントは以下のとおり。
- 鉛筆より細い枝は切る
- 芽の方向で悩むときは、高さをまとめるほうを選ぶのがお薦め
葉っぱは取らなくてもよいけれど、来年の病害虫対策として、基本的にはむしってしまいます。
用土変え
剪定が終わったら、次は植替えです。
ここでは鉢のサイズを変えずに用土変えを行う方法にします。
鉢の下から根っこが出ている場合は、引っかかって株が抜けない場合があるので鉢底をチェック。
スポッと抜いてみたところ。
ある程度根が回っていていい感じです。
てんちょのモットーは「なるべく器具は使わず手で!」
器具を使ってしまうと、根の状態が手に伝わってこないので、手袋だけで手で揉み解すようにやるのだそう。
握力などの問題もあるので、難しい場合はこの限りではありませんが、手で触ってやることで、ムリに根をキズつけることも避けられますし、根が張ってる場所もなんとなーく伝わってきます。
「一年間花を咲かせてくれてご苦労様」とマッサージをしているカンジでモミモミほぐします。
私は指先でブチブチブチと細い根を切ってしまうのが怖いのですが...
てんちょ曰く「細い根は切っても大丈夫!太い主根を金具などでキズ付けてしまうことを避けるのが大切。」なのだそう。
寝鉢の肩のあたりは、肥料をやる影響で根が集まりやすい部分。
ここもほぐしてやりましょう。
鉢底のあたりも根っこがあつまって硬くなってしまう部分なので、ここもほぐしてやります。
主根をキズつけてしまうと、そこから菌が入って癌腫などの原因になってしまうこともあるのだとか...
(必ずそうなる!というわけではないですよ。)
間違っても主根の根をたわしで擦ったりしないように!!!
そんなわけですから、全体の2/3~3/4ぐらい土を残して、主根のあたりに少し土が残っている程度でマッサージは終了です。
ちょっといい加減ぐらいが丁度良し!なわけですね。
切花の水上げと同じように、2~3時間水につけてあげます。
このとき、バイオゴールドバイタルやメネデールを入れておいてあげると根つきもよくなるはずです。
2~3時間水につけず、ささっと植え替えてメネデールなどを希釈した水をあげる方法もOKです。
ポイントは、「ささっと植え替える」こと。
1鉢植え替えては水遣りして。また次の鉢。と作業できるなら、水につけるのは省いても大丈夫。
元気がない苗などにはこの工程を入れてあげたり、植替え後に水遣りするときにメネデール入りなどで潅水してあげるほうが、活着が良くなるのでお勧めだそう。
水につけて置いた苗を、今度は用土で植えつけます。
少しでも根を張れるスペースを確保したいので、バラの家の深鉢とバラの家培養土を使って植える場合は、通気性や排水性が良くなるよう計算されて作ってあるので、鉢底石は入れずに直接土を入れてしまうそうです。
鉢底炭の場合は通気性や排水性とは別の効果を期待できるので、入れるなら鉢底炭のほうが良いかも?だそう。
鉢に植えつけるときのポイントは以下の4つ。
- 鉢のフチとバラの接ぎ口が同じ高さになるように。
- ウォータースペースは必ず確保
- 土を入れながら、何度かトントントンと鉢に刺激を与えて土を隙間に入れ込む。
手で押したり、棒でつついたりせず、水と重力にまかせて。 - 水はたっぷり。1度水あげした後に30~60分後にもう一度。
バラ園や園芸家さんによっては、接ぎ口が土の下に来るように植える手法をとることもありますが、てんちょさん曰く「浅く植えたほうが水はけがよくなるので高温多湿の地域では、バラの生育が良い」のでお薦めなのだそう。
ヨーロッパなどで接ぎ口から5cmくらいまで上まで植えてしまうらしいのですが、この手法にも、勿論利点はあるのだそう。
寒冷地の以上な寒さで地上部が枯れこんでも接ぎ口は守れること。
テッポウ虫などの害虫があったとしても、複数の枝の1つが被害にあうだけで済むこと。
つまり、枝のどれかが枯れてしまう可能性があっても、そぎ口が守れるので全部が枯れてしまうリスクを下げられるということです。
そぎ口が土に隠れてしまうことで、園芸種の自根が出てしまったりというリスクも出てきます。
生育を考えると、やっぱり浅めのほうがお薦め。というのがてんちょの考えだそうです。
木立バラの場合、支柱は特に必要ありませんが、枝にラベルを直接つけると、風などでラベルがゆれたときに枝にストレスを与えてしまうので、支柱をさしてそこにラベルをつけるのが良いそうです。
フロリバンダ(F) - 中輪系のバラの場合
HTの特徴は秋の管理の時に確認しました。
これをおさらいしながら、更に樹形についての特徴も確認です。
F:フロリバンダの場合
- 四季咲き(花芽分化期に必要な夜温:13~16℃)
- 中輪・房咲き(枝数=花数)
- 細くて枝数が多い
- 木立ち・・・横張りの性質が強い
Fは、HTに比べて花が小さく、爪楊枝ぐらいの枝の細さでも十分に花がつくのが特徴です。
Fの冬剪定
モデルは、連弾さん。
HTは枝数は少なめで深めに剪定しましたが、Fの場合は枝数を確保したいので、積極的に枝別れしている上でハサミを入れていきます。
もちろん、ある程度の内芽と外芽を意識して...。
株元のモサモサとして込み合った枝や爪楊枝以下の細い枝は整理します。
基本的に一番重要なのは「枝数の確保」なので、多少枝ごとに高低差がでてしまっても気にせず剪定していきます。
高低差が出てしまった場合は、低くなっているほうを南側(太陽にあたりやすい方向)に向けて鉢を置いてやることで、春以降の成長で自然とバランスが取れてくるのだそう!
バラも頭がいいですね...。
HTの時のように、葉も落としてやります。
もし、「葉を落とすのは面倒!」ということなら、害虫たちを越冬させないように、しっかりと薬剤散布をして、葉を落とさずにいるのも良いそうです。
春になって次の新芽がでてくるころに、バラが自分で古い葉を落としてくれます。
剪定が終わった状態です。(これ、背景なにかあったほうがいいですね。写真が見づらい...)
枝が交差したりぶつかっていると、剪定しなくちゃいけないような気になってしまいますが、Fは枝数は確保=春の花数に繋がるので、なるべく残しておきたいですね。
そういうときは、写真右のように、ローズスタイリストや支柱で枝を軽く誘引してカタチをつくってやると良いそうです。
枝数を確保して、さらに交差枝なども解消されますね!
太さにもよるけれど、暫くこのままにしておくと、枝がカタチを覚えて固まるので、樹形スタイリストになった気分でやってみましょう!(笑
予断ですが、オリーブの樹形作りもこの方法を使いますよ。
HTとFの剪定の違い
FとHTの剪定後の比較です。
左がF、右がHTです。
枝数を残したFと比べて、HTは明らかに枝の太さが際立ちますねー。
鉢増し
剪定が終わったら、次は植替えです。
鉢のサイズを一回り大きな鉢にする方法です。
この時期に一回り大きな鉢に鉢増しする場合は、先ほどの用土替え作業のときのように土を落として総入れ替えをする必要はありません。
そのほうが春の花つきもよくなるのだとか。
鉢の下から根っこが出ている場合は、引っかかって株が抜けない場合があるので鉢底をチェック。
根鉢もクッキリ。ぱんっぱんに根が張っていました!元気です。
まずは肩の部分とお尻の部分を崩してやります。
肩の部分は、お尻の部分と同様根詰まりをしやすい場所。
そして、肥料などのいらないものが溜まっている場所でもあります。
てんちょ曰く「バラはワガママなので、古い肥料が残っていても吸いたくない肥料は吸いません!」だそうなので、新しい肥料を吸いやすいように一年の肥料の残りは取ってあげるつもりでほぐしてやりましょう。
お尻の部分も、根詰まりを起こしやすい場所なのでほぐします。
根詰まり部分は、素直に根が生えているところぐらいまでむしりとってしまうイメージ。
最後に、根鉢の周りを、軽く揉みほぐします。
根鉢の形を少し崩して根っこを少し表に出してあげるぐらいです。
8割り程度の根と土が残った状態です。
根鉢もそのままに、鉢から抜いて新しい鉢に入れる鉢増し方法でもいいです。
より長いスパンでの生育を考えれば根っこが新しい土にぐぐぐっと伸びやすいように少し刺激を入れてあげるぐらいのほうが良いそう。
- 用土替えをする=長期的成長に効く
- 用土替えをしない=短期的成長に効く
土がしっかりついているので、水に漬けずそのまま植え込んでしまいます。
接木のイチが鉢のフチと同じ高さになるように調整して、植え込みます。
バラの根は空気を好むので、少し土に隙間があるぐらいのほうが生育が良かったりするそう!
土の量は、最低2~3cmのウォータースペースがしっかり確保できる位置まで。
左が鉢増しをしたF。右が用土替えをしたHTです。
8号は大きいですねぇ...
冬越し中の管理方法
1年通して変わらないことですが、冬の間も日当たりの良い外においてあげましょう。
バラは冬の寒さに当たることも春に良い花を咲かせる株に成長するために大切なプロセス。
暖かい室内に入れたりせず、「子供は風の子!」と積極的に日当たりの良いお外においてあげましょう。(笑
寒肥や堆肥マルチング
バラの家培養土をつかって植え替えた場合は、肥料もはいっているので寒肥は必要ありません。
さらに植替え後は、根付いていないので肥料もいりません。(冬は休眠期ですしね)
初期の肥料としては良いのだけど、牛糞粉や骨粉やバーク堆肥は、土を悪くもする存在。
現在は、液肥や置き肥など、しっかり根にいきわたる良い肥料が出ているので、てんちょの方針として「冬に新たに肥料だけを入れないほうがいい」と考えているそう。
特に木質系のマルチ系肥料はコガネムシが産卵しやすい環境をつくってしまうので、避けたほうが良いそう。
植替えた鉢には、新しい培養土の肥料があるので堆肥のマルチングも必要ないそう。
植替え後は根が張っていないので、水遣りをしすぎて根が弱ってしまうのを避けたい時期。
堆肥マルチをしてしまうと、土の乾き具合が見えず、水をやりすぎてしまうこともあるので、なるべくマルチングはせず土が見えたほうが良いそう。
それとは逆に、植替えができない場合は、堆肥マルチングをする方法もあります。
春先の肥料は、関東圏なら2月下旬~3月頭の頃に。
3cm~遅くとも5cmぐらい新芽が動いた頃にやるのがお薦めだそう。
病害虫対策
今年の夏のように高温の夏には、カイガラムシの被害が出やすいそう。
もしカイガラムシの被害があった場合は、歯ブラシでカイガラムシを落としてベニカDスプレーやアクテリック乳剤をぬっておきましょう。
アブラムシや毛虫類などの、外から飛んできて卵を産みつける種類の害虫は対策は、マルチングに注意などの方法はあっても薬剤での対策はなかなかありませんが、来年の黒点病やウドンコ病、ダニなどの被害を抑えるための対策はこの時期からはじめられます。
書籍などで良く登場する「石灰硫黄合剤」ですが...これは、バラへの適応がなくなってしまったので使えなくなってしまいました。
ローテーション剤としては効果があったのですが、今は他にも良い薬剤が出てきているので、石灰硫黄合剤を塗る以外の対策で十分だそう。
冬の間は、寒さで高温障害が出ないことと、バラが休眠していて葉がないために、薬害が出にくい時期なので、これを生かして、通常1000倍を1週間に1回薬剤散布していたなら、この時期は2週間に1回や一月に1回、500倍で散布してみましょう。
希釈倍率を濃くして散布していいのは、春先の新芽が出るころまで。
芽が膨らんできたら、元の希釈率に戻します。
ダニなどの害虫たちは、株元の隙間や鉢などに隠れて越冬するそう!
枝だけでなく、表土や菌やダニが隠れて居そうな場所にも散布しておくのも良いでしょうか?
落ち葉の下などでも越冬するので、お庭やベランダの落ち葉掃除もしっかりと!
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