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自殺した母

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あたしは広い家に住んでいた。
父は今の父と同じだったけれど、母はとてもほそく、顔はよく覚えていない。
今の母とは違う人だと自分でもわかっていた。

家の雰囲気も、父も母も私も周囲の人たち服装も、現代のものとは違っていて、どこか別の世界や時代を思わせる雰囲気だった。
ただ、私は何故か裕福な家の娘らしかった。

家の広間でパーティーが開かれていた。

知っている人、知らない人、大勢というほどではない人数が居た。
父は誰かと話をしていたが、母が見当たらなかった。
そしてあたしは、何故かその場所から逃げようとしていた。

その場から簡単に抜け出すことができたが、誰かが一緒についてきていた。
その人は、知らない人だったが、自分を護るためにいる人だということはわかっていたし、逃げ出したことを止めようとはしなかったので、何も言わずに放っておいた。

この広い家には、誰も行かない場所がある。
あたしはそれを知っていて、そこにこっそりと向かっていた。
そこはあたしのお気に入りの隠れ場所だったのだと思う。
誰かに見つからないように、気にしながらその場所に向かった。

いつもなら人のいないはずのその場所に、何人かの警護がいた。
不信に思いながらも、あたしはその人たちの横を通り抜け、お気に入りの屋上にたどり着いた。
そこまで高くはないが、3・4Fぐらいの高さのある屋上だ。

でも、そこはいつもと雰囲気が違い、あたしは不安になった。
何故だろうと歩き回っていると、母を見つけた。

母は深刻そうな、悲しげな顔で屋上の端に立って、どこか遠くを見つめていた。
周りにはなにもなく、綺麗な風景が広がっているのだけど、この日はあまり天気が良くなく、曇り空で遠くが見えない。
何を見ているのかあたしにはわからなかった。
ななめ後ろからみた母の後ろ姿や、顔、服を綺麗だなと感じていた。
あたしはしばらくそのまま母を見ていた。
母はあたしに気付く様子はなく、ずっと遠くを見ている。
突然、周囲が騒ぎ出した。
さっきいた何人かの警護の人間が騒いでいるのだとわかった。
左右を見て、後ろを振り返り周囲に目を向けると、いつのまにか警護の人間が近くまで来ている。
そして、母に目を戻すと、その瞬間、母は目の前から消えてしまった。

母は、屋上から飛び降り、自殺した。

そこで目が覚めた。

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